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インサイダー情報の取り扱いに関する社内教育のご紹介

アピリッツでは「インサイダー取引」に関する社内教育を定期的に実施しています。こちらの狙いやテストの様子について、CFOの永山と法務の松竹に話を聞きました。(2021年2月 取材)

上場企業の社員として理解しておくべき非常に大切なこと

―― 上場に先立って「インサイダー情報の取り扱いについての研修」と「理解度テスト」を2月上旬に実施しました。こちらの受験率や回答結果はいかがでしたか

永山:「インサイダー情報の取り扱いに関するテストをしますよ!」と社内にお知らせをして48時間経過しました。この時点で300人近くがテストを受け、みなさんほぼ満点を取っています。正直、「えっ、もうこんなに受けてくれたの!?」って思いました。あらためて、アピリッツの社員は協力的だなあと……。

松竹:「はい・いいえ」で回答するタイプのテストで、正解の場合も不正解の場合も「解説」を読んでもらうフローにしました。今回初めてのテストでしたが、こちらが想定していた以上にテストの結果が良かったので、うれしいです。

今後もパブリックカンパニーとして求められる法令順守のための知識を周知するために定期的に「インサイダー情報の取り扱い」や「コンプライアンス研修」など、法律に関する研修をおこなっていきます。

研修資料の一部

永山:労働基準法や業務委託契約の法解釈など、知っておくべきことは沢山あります。なかでも、インサイダー情報の取り扱いは、上場企業の社員として理解しておくべきとても大切な内容です。しかも「インサイダー取引規制関連法令」は意外とわかりづらいし、悪意なく違反してしまうことも多々ある。

「そんなつもりじゃなかった」が通用しない

―― 悪意なくやってしまったことが処罰の対象になる?

永山:そうです。「そんなつもりじゃなかった」が一切通用しないんです。

松竹:自分ではない誰かに売買を委託しても罰則の対象になります。当社株式の場合でも他社の株式でも、情報漏洩した側でも知った側でも、同様に罰せられます。

これからも定期的に法律に関する研修をおこなっていきます

永山:ですから、まずは、社員全員に「みなさんが日常業務で携わっているの情報にはインサイダー情報が満載ですよ」という周知からおこないました。

ほら、友達や恋人や家族に近況報告がてら「いまうちの会社でこんなお客様と取引があるよ」とか「こんどこんなサービスが出るよ!」なんて言いたくなっちゃいますよね。それを聞いた相手が「よーし、じゃあ、業績もあがりそうだし株価があがる前に買って株価が上がったら売却してお小遣いでもかせいじゃおうかな」って株を買うと、アウトです。

―― バレるものなんですね。

永山:バレますね。どうやってその取引に違法性があるかをキャッチしているかまではわかりませんが、「証券取引等監視委員会」がウォッチしています。過去に摘発された事例をみますと、取引金額の大小は関係ありません。しかも、インサイダー取引の調査対象になると、大変やっかいかつ、自分も周りもしんどいです。啓蒙ポスターに「あそこまで調べられると知っていたら絶対に手を出さなかった」というものがあるのですが、正にそれですね。

啓蒙ポスター。メッセージ性強し!

調査対象になると何が起こるか?

―― 調査対象になると、どうなっちゃうのですか。

永山:過去に私が間近で経験した実際にあった“とある人”の例をお話しますね。その人が勤める会社でIR的に大きな発表があった数日後のことです。突然ノーアポで「証券取引等監視委員会」の捜査員が会社にやってきました。いつもどおり会社に出社したら、朝イチで捜査員も会社に来てて、「XXさん、会議室に来てください」と呼び出すわけです。

―― 自分の会社の会議室に、捜査員が待ってる。

永山:はい。数人で待ってました。で、本人は何も知らずに「なにかなー?」って会議室に入ると「我々は証券取引等監視委員会のものです。インサイダー取引規制の調査のためにお話を聞かせてください。調査終わるまでここから出ないでください。携帯電話もすべて出してください」と言われます。

―― あ、いきなり閉じ込められる。

永山:そうです、自分の会社なのに。そして調査が始まるのだそうです。

会社のPCも、プライベートの携帯も、すべてが捜査対象

―― 取り調べで色々と聞かれて「関係ありませんよ」と説明しても部屋から出してもらえない?

永山:出してもらえないでしょうね。根掘り葉掘り、問い質されます。「何月何日に誰にあって何を話しましたか?」とか。「この情報を社内の関係者に共有したのは何月何日でどこの会議室で共有しましたか?」とか。

取り調べの厳しさは、インサイダー取引をやったなという自覚があってもなくても同じです。

もし身に覚えがあるなら、正直に白状しろ!って話ですけど、覚えがない場合が最悪。痛くもない腹を探られるんですからね。

しかも、この取り調べのあいだに、捜査員方がその方のメール履歴、チャット履歴、スケジュールのデータを提出してくださいとなりすべてのものを調査としてもっていきます。個人の手帳やノートもだそうです。

―― 私物も?

永山:はい。「そんなもの、インサイダー取引と絶対関係ないだろうに!」って誰もが思うようなものすら容赦なく持っていかれます。会社のメールも、プライベートのメールも、LINEも、全部捜査されます。PCの中身もフル捜査されますので、音楽の趣味も、動画の閲覧履歴も、まるごと他人に見られます。もうホント丸裸。

ホント丸裸!!

―― はずかしいですね

永山:はずかしいでしょうね。しかも、この捜査のやっかいなところは、捜査結果は教えてもらえないところです。後日逮捕されたら「クロ」ですが、「シロでした!」というお知らせはないんだそうです。「捜査の結果、あなた無罪でしたよ、疑ってごめんなさいね」なんて連絡は一切ないそうです。

―― じゃあ、社内でも疑心暗鬼になる……?

永山:そうです。上司から「お前、インサイダー取引をやったのか?」とか言われちゃう。言われる側も「自分じゃない! じゃあ誰かこの中にインサイダー取引規制に違反した人がいるのか……?」と疑い深くなる。モヤモヤがずっと続きます。仕事どころじゃないでしょうね。

ちなみに、有罪となったらどうなるかも考えてみましょうか。罰金が課せられますし、当然、会社でも処分されます。パブリックカンパニーとしては処分をしないわけにはいかないですから「懲戒解雇」ってこともあり得ます。そして記録が残ります。万が一わたしが逮捕されたら(もちろん絶対やりませんが)、狭い業界ですから、即刻「あいつはインサイダー取引で捕まった」と噂が回ります。ですから再就職は難しいでしょうね。

松竹:履歴詐称は発覚すると解雇されるケースが多いですし、近年は、社員の経歴を調査する会社さんもあると聞きます。

どんなに大切な仲間でも処罰の対象になる

―― 「悪気なくやってしまうケースが多い」のですよね。切ない。

永山:切ないですよ。「ああ、酔っ払って彼女にちょっと話しちゃったんだなあ」とか「親御さんが買っちゃったんだなあ」って、違反者に悪意がないことを会社がわかっていたとしても、どんなに仕事を頑張ってる優秀な社員だとしても、大好きな仲間だとしても、パブリックカンパニーである以上、罰しないといけません。後味がとても悪い。

松竹:しかも法律の条文は複雑ですし、パッと読んで理解できるものではありません。ですから、今回の社内教育では、まず「やってはいけないこと」をわかりやすく伝えました。

永山:法律を完全に暗記しなくても、とにかく意識してほしいんです。「ああコレ会社で言われてたな、気をつけよう」って。

―― 未然に防ぐって大切ですね。

松竹:大切です。トラブルを未然に防ぐという意味では、法務が契約書の条文をチェックすることも同じ役割を担っています。「そんなこと起こるわけがない」に備える必要があるのです。

永山:コンプライアンス遵守のルールや内部統制については「こんなに厳しくして、なんの意味があるの? 面倒だな、チッ」とか言われがちなんですが、その「未然に防ぐ」ことが僕らの仕事です。なにごともない場合はこういった取り組みはなかなか評価されませんが(笑)、何かトラブルが起きたら会社や従業員への負のインパクトは計り知れないんですよね。この手のことは「発生可能性が低いからOK」ではなく、手は抜けません。 パブリックカンパニーである以上、大切なんです。ですからみなさん、これからもご協力よろしくお願いします!

もしインサイダー情報の取り扱いについて不安がある場合は、永山や松竹に相談してくださいね。

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