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【ゲーム制作の現場から】03:シナリオ執筆のコト始め・企画編
 

【ゲーム制作の現場から】03:シナリオ執筆のコト始め・企画編

「世界観設定のコト始め」の続きです。企画フェイズで、物書きから見える開発現場の風景についてお送りします。

■ それってどんなゲームなのヲォ!?

◎ 神は申された、はじめに企画書あれ

♪マスターAPKは歩いて来ない♪
♪だぁ~からぁ、企画を書いてぇ~、予算を取るんだよン♪

そう、ゲームのシナリオを書いてお賃金をいただくためには、ソフトウェア制作が始動しないと、お話になりません。それには情報共有するための資料、企画書が必要です。

ぱっと見て理解できる情報、読ませてわからせる情報。作成目的にあわせて、資料の粒度を決めます。

企画フェイズでプロジェクトのロードマップが敷かれ、長い旅がはじまる

◎ 設定が先か、話が先か?

さて、初見で理解できる資料とは、そもそも何でしょう?

映画の宣伝ポスターのように、ひとめで理解できる短い言葉とビジュアルが必要です。そのため、世界観を共有する資料を先行して作成することがあるのです。コンセプトアートを早めにあげ、開発者のイメージを統一するのです。

作家はストーリーが先と考えるかもしれませんが、TRPGのシナリオ作成と同じだと思ってください。世界設定が書かれたガイドブックがあって、そこにシナリオを乗せる形式に相当します。

コンピューターゲームとTRPGのシナリオ製作は似ている部分も多い

■ 企画書の中身

◎ 君の企画は10,000ボルト

では、ゲームの企画書には、どんなことが書かれているのでしょうか? 

まずは構成について。アイデア企画であればペラ1-2枚が求めてられます。アイデアが明確にあったり営業用の場合は、システムや画面遷移など設計原案を固めた、20~30枚程度のしっかりとした企画書になるでしょう。

後者の場合、わたしは大きく2つのパートにわけます。前半は、4~5ページのゲームの魅力を伝える見てわかる資料。後半は、二十数ページのシステム概要書です。では、具体的にどんな項目の情報が必要でしょうか?

ビビッと来るアイデアが詰まっていないとトラッシュボックスへ一直線です。紙の資料なら、SDG’s的にもよくありません

◎ 認識することで世界が生まれる

 タイトルにはじまり、こんなゲームですというコンセプト、ターゲット、RPGの肝となるシナリオの概要、作品の売りとなるゲームデザイン、製作にかかる要件を記したプロジェクトスコープ。これがあれば企画内容が伝わるはずです。

企画書と同時に、クリエティブの細かな一覧表など付随資料が生まれる

シナリオ面では、簡単な世界観と100~200文字のストーリーの概要が必要です。グラフィックイメージを描き起こす場合は、事前に発注用の設定も起こさないといけません。

◎ ライターから見える企画書の項目

シナリオへ直接言及はされていない項目には、どう関わり、どう見えているのでしょう? 

  • タイトル

 ゲームそのものを指す。テーマであったり、比喩的な表現。

 ⇒ ストーリーやプロットを作成するときに、テーマからブレない離れない為の灯火。

  • コンセプト

 ゲームの根幹をなす概念。ゲームジャンルや、何を表現して誰にどんな体験をして欲しいかが書かれている。

 ⇒ ここを起点にシナリオを描く。物語、キャラクターの性格・行動など、展開のアイデアを出す。

  • ターゲット

 対応機種、プレイヤーの年齢層と仮想ペルソナが設定されます。

 ⇒ ジャンルや読み手の年齢は、構成や文体に影響する。登場キャラクター造形は、人間関係の複雑化に関わり、ストーリーの展開の粒度に影響、構成は脚本の総量に影響する。

  • シナリオ概要/世界観概要

 それぞれペラ1枚で簡素な情報量が好ましいです。

 ⇒ これを書くためには、ログラインを切り、シナリオコンセプトやふわりとしたストーリーができあがっているでしょう。キャラクターについても言及することもある。

  • ゲームデザイン

 ゲームの肝となる、システムの概要。プレイサイクル、画面遷移図はプレイヤーがどんな体験でプレイするのかが書かれた設計図となります。

 ⇒ ゲームサイクル(プレイ時間)から物語の動線を把握、構成を組み、シナリオの総量を出します。プレイヤーの感情曲線(エモーショナル・アーク)を出して、芝居のリズムを想定。必要な演出やクリエイテブ量、各画面でライターが関わる部分の洗い出す。

 ⇒ 画面遷移を把握。プレイヤーの行動タイミングと取得情報から、ゲームを魅力的に魅せる演出アイデアを練り、必要な作業量を見積もる。

  • プロジェクトスコープ

 要件定義やどんな布陣で製作を行うかの、物量総括。企画を煮詰めて、クリエイティブや作業量を決め打ちすることで固める項目。

 ⇒ 何をいつまでに書かなければいかないかを判断。人繰りとスケジュールの材料となる。

 こうしてゲーム全体の構造想定ができ、クリエティブリストが揃うと、企画フェイズは大詰めです。

■ その企画、おいくら万円?

◎ お金という重力質量の問題

 プレイヤーがどんな世界で遊ぶゲームなのか? 企画が固まれば、シナリオライターは”作品”の話を考え始めることができます。

 しかし、企画フェイズでは商業的な面もクリアする必要があります。

 プレゼンして、開発承認を得て、予算を獲得するのです。そうお金勘定をしている層(レイヤー)では、ゲームはあくまで”商品”なのです。会社がいくら投資すると、どのくらいのリターンが得られるのか? ソロバンを弾いて、開発費用・運営費用を見積もらないとイケません。

 予算を取らないと先に進めないのですから、この重力には逆らえません。最優先項目に早変わりです。

 企画レベルのふわりとしたプロジェクトスコープを詰め、予算獲得のフェイズに進みます。もちろん、プロジェクトや会社によって、予算決めに必要な項目や手順は変わってきます。スマホのオンラインRPGの場合(経験上)こんな感じになりそうだという想定の元、話を進めます

制作現場にとっては予算は、人繰りの数字でしかない

◎ 要件確定、予測、トラブル回避

 シナリオ担当が、予算決めの重力から開放される行動。それは、推測されるシナリオ関連の作業量を企画者と共にソロバンして、人月を算出。エクセルファイルをスイングバイです。

PL(プランナー)、SV(サーバ)とCL(クライアント)、DS(デザイナ)の担当者で総量を算出。D(ディレクター)やP(プロデューサー)が調整して、見積もりが出来上がる

 シナリオパートだけを考えた場合でも、ラフプロット(簡単な話の筋組)ぐらいは切って章立てしていないと、見積もり精度が落ちてしまいます。しかし、諸事情でエイヤーっと決めなければならない場合もあります。そんなときは、金額に下駄を履かせたり、根回する知恵を働かせて、未来のトラブルを極力回避します。

 予算が組まれ、GOが出たら、本腰を入れてプロット起こしです。企画初動からシナリオ担当が参加していれば……。

■ 見ている世界の違い

◎ 職業的な第三種接近遭遇

 さて、ここでゲームの企画書とは誰が書いているか考えてみましょう。

 ゲームなのですから、ゲームデザイナーやゲームディレクターが書いていることが多いのではないでしょうか? 発注元があれば、制作プロデューサーかもしれません。

 そう、企画書を上げて予算を見積もった人間が、シナリオ制作に精通しているとは限らない、ということです。

開発がスタートするまでの助走期間で、ゲームとしての骨は固まる
  •  ゲームデザイナーから見える世界

 ゲームとは、あるルールのもと勝敗を決めます。ゲーム制作者から見えてるシナリオの世界は、「敵と味方がどこで何をかけて雌雄を決しているのか?」です。

 ゆえに、ゲームデザイナーの中心はゲームのルールやシステムなのです。

 話のモチーフ、舞台や登場キャラクターの相関図やファクション(勢力図)といった設定、ビジュアルをどうするのか、敵味方の見え方に気を配ります。別の言葉にすると、プレイヤーからどう見えるかが重要なのです。

  •  シナリオライターから見える世界

 物語とはヒトとヒトとのドラマであり、脚本は因果関係を芝居に落とし込んだものです。誰かの問題をどのように解決して結末を迎えるのかを描きます。

 ゲームのシナリオライターは、登場人物のココロ(感情)のゆらぎと、行動による変化で生まれる出来事(ドラマ)を綴ります。舞台で役者(キャラクター)にどんな芝居をさせるのかを、演出も含めて表現しようとするのです。

見る角度の違いで、受け止め方は変わる

◎ 畑違いの未知との遭遇

 ゲームデザイナーとシナリオライターの領域。専門性が違うので、当然モノの考えや視点は異なります。もし、脚本家や演出家の視点が足りない場合、何が起きるでしょうか?

 演出面の調整時間、エモーショナルラインの調整時間、できあがった芝居のリズム調整など、専門的な作業が見落とされることになります。これは時間=予算(スケジュールを含む)に直結しますので注意が必要です。正しい知識やそれと同等の嗅覚を持たない者のジャッジは、適当な判断でしかないのですから。

 この危険を回避するには、企画・グラフィック・プログラム・シナリオ・運営の専門的な知識を持った開発者が企画フェイズから目を光らせていることが大切です。

■ 音を探そう

◎ 企画書の本質

 ゲームの企画書。それは、「こんな世界やシステムをゲームにしたい!」という、クリエイターの表現欲求が書かれたコンセプトBOXです。シナリオを執筆するための根源情報となります。なぜコレを創っているのか見失い、無限のアイデアに流されてしまったとき、目指すべき道標となります。

 シナリオ担当は、企画の根源を見極め、世界観や設定を起こし、脚本を書き、芝居を成立させることが仕事です。

◎ あなたのD・E・C・C・G

 そんなゲームプロジェクトでは多くの人達が関わる、未知との遭遇です。専門性の違う人達があつまり、よい作品になるようにお互いが理解しあえる共通の音を探す。対話することで、うまくプロジェクトを進めるのです。

 相手が生き物であれば、対話することができます。諦めない努力は必要なのです。 

 ♪レ・ミ・ド・ドォ・ソ~ォ♪

 ※※ 次回は、「シナリオ執筆のコト始め・プロット編」です。

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