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【ゲーム制作の現場から】 01:RPGシナリオのコト始め
 

【ゲーム制作の現場から】 01:RPGシナリオのコト始め

コンピューターゲームの開発で、脚本とどう向き合えばいいのか? 物書きから見える、開発現場とシナリオの考え方について、シリーズでお送りいたします。1回目は、RPGシナリオの始めかたです。

■SHALL WE PLAY A GAME?(ゲームをハジ〆ヨウ)

◎ 表現すべきコト

 コンピューターゲームのシナリオを書くときに大切ものって、なんでしょう?
 ゲームをつくるのですから、間違いなくゲームのテーマと向き合うことです。ライターのすべきことは、PCや機器(デバイス)で表現したいという欲求に最適な物語を提供し、美しい世界を構築することです。

 ここではシナリオを、脚本だけではなく世界観やストーリなど、ゲームの物語性を包括する呼称、としてお話します。

コンピューターゲーム市場は、大きく3種類に分類できる

◎ 純粋な衝動が自分を動かす

 ゲームのテーマとは、何かをつくりたいという欲求や目的の結果として生じます。それが業務や指示であっても、何かを産み出す行為はクリエイターの衝動につながるのです。

役職によって、制作動機やクリエイターとしての渇望は異なる

■eXistence(実在)

◎ リアルに存在する電気じかけの異世界

 RPG(ロールプレイング・ゲーム)では、その名の通りプレイヤーがゲーム世界の何者かを演じ、遊びます。もし、物語やキャラクターなどの各種設定がないと、どうなってしまうでしょう?

 グラフィックの発注資料はあがらず、バトルするエネミーはおろか地形もできません……。これではプレイヤーの芝居が成立しませんね。

 そう、ゲームシナリオとは、PCやデバイス上で芝居を上演するドラマ(演劇)の設計書なのです。ゲームのテーマと並行して存在していなければならない大切なものです。

舞台、役者、背景、音声。芝居のすべてがデータ化され、プレイヤーの操作で芝居が進む

◎ ジャンルとしてのゲームシナリオ

 芝居ですから、シナリオを書く側は、劇についての知識が必須です。ローマ時代から娯楽や宗教儀式の一環として生まれ、能やミュージカルなど多様なジャンルがある演劇(舞台劇)。編集されて完成する、映像と音声技術から生まれた、映画・TV(ドラマ、アニメ)の映像劇。この2つに、ざっくり分けて考えるのがよいでしょう。

舞台があり、俳優が芝居をするという構造は普遍的

 演劇、映像制作の脚本は、大学や各種スクール、ワークショップがある専門性の高いもので、そのぶん資料も豊富です。入門書籍から研究書まで多数あり、時流にあわせ出版されています。近年はゲームシナリオ(Video game writing)の分野も、研究が活発です。

■Electric Dreams(機械じかけの夢物語)

◎ ゲームシナリオの魅力

 演劇や映像作品は、一定の尺(時間)の物語を観客が見て完結します。観客は与えられる映像情報を受け取るだけですが、ゲームの場合はデバイスを操作することでビジュアルや音が返り、プレイヤーの操作にあわせ進行します。

 インタラクティブ(双方向性)な芝居の変化は、機械上で動作するからこそ可能なもの。ゲームならではの醍醐味です。

◎ お仕事いろいろシナリオライター

 プランナー職としてシナリオを担当する場合、単純に脚本を書くだけではありません。

 世界観と美術を補うための各種資料(設定)、キャラクター発注資料、ストーリーにまつわる資料作成に脚本、ゲーム用のデータの作成に表情や身振りの芝居付け。芝居をリッチにするためにCV(キャスティングボイス)の制作、ゲーム内で使用する各種テキストといった具合に、シナリオ担当に投げ込まれる仕事は多岐にわたります。

シナリオから派生するすべてのことに目をくばる

 ライティングだけではなく、演出や美術、音響担当も兼るということもあります。こうなると舞台そのものを演出する、監督の視点も必要です。ゲームディレクターはゲームのバランスを含め全体をみますが、シナリオ担当は世界観がきちんと組まれているか多角的にみて、芝居を支えます。

◎ 新しい芝居のかたちをさがせ

 現実の芝居と大きく違うのは、機械の上で動作するためすべての情報はデータ化され、プログラムで管理されていることです。

 そこには、ゲームゆえの制限や仕様があります。キャラクターの芝居では、文字数は定義され、タップ毎に動作を制御しないと動くことはありません。CV(キャラクターボイス)も尺の都合でセリフを短くしなければならないことも。キャラクター絵に表情差分、背景、演出アニメーションなど、すべての画像はクリエイティブとして用意しないといけません。できることも、プロジェクト毎に変わります。

 スマートフォンゲームでは話の中心となるシナリオパートは、紙芝居と同じ構造になりがちです。状況説明になりやすいセリフを、いかに自然な芝居できるかは腕の見せどころといえます。スキップせずに読んでくれる、「面白い」と評価される脚本が次の仕事につながります。

企画の段階で予算が確定するので、どんな規模の芝居ができるか決まる

◎ 収益構造が舞台の中にある

 キャラクターを魅力的に表現するシナリオは、ガチャ課金のあるゲームでは売上に大きく影響するため大切です。

 シナリオパートだけではなく、TOP絵や各種演出でのキャラ出しなど、XDとしての魅力つくりも考えないといけません。近年はシナリオライターというより、キャラクタークリエイターと呼ぶ方がふさわしいと思える場面もあります。 

■The Thing(物体X)

◎ シナリオは一時生産物

 さて、ゲームシナリオも基本は劇であり、独自のお作法がある演劇ジャンルのひとつ、というお話をさせていただきました。

 ライターはゲームのテーマに沿って、シナリオに関するすべての事柄に目を光らせ、最善の物語を紡ぐだけです。プロジェクトという船の一員として……。

◎ 虹色の影がゆく

  芝居は奥が深いものですが、そこにどれほどの価値を求めるかはプロジェクトによって異なります。

  どんな座組で、何を目指すのか?
  少なくとも、正しい知識を持った船長がプロジェクトにいなければ、シナリオの良し悪しが判断されません。

  出港すれば、マスターアップという次の港まで船は止まりません。
  乗る船が、よきものか? ドロ舟か?
  そもそも船長はニンゲンでしょうか?

  興味深い物語です。

※※ 次回は「世界観設定のコト始め」

■鈴木常信(すずき つねのぶ)|アートディレクター/プランナー
アピリッツでは、「オルターレコード・アジャスメント」、「ひよこ社長のまちづくり」、「ギャルが株でのランゲーム」と受託のオリジナルゲームのシナリオを執筆。ゲーム攻略本、映画コラムなど、書籍も多数執筆。

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