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拳圧だけで、吹っ飛ばす。

この記事はアピリッツの技術ブログ「DoRuby」から移行した記事です。情報が古い可能性がありますのでご注意ください。

漫画やアニメなどの世界でちょくちょく見かける、拳圧だけで相手を吹っ飛ばすシーンについて考えてみたいと思います。

初めに

 お互い離れた場所にいるにもかかわらず、片方がその場でパンチするモーションをしたら、相手が吹っ飛んだ、のようなシーンはバトルがある漫画等ではそれなりに見かけると思います。今回の記事では、実際にこれを真似するにはどのぐらいのパンチ速度が必要なのかを考えてみたいと思います。

前提条件

 今回も、高校レベルの化学と物理によるザックリ計算を目標に、色々と簡略化・無視して考えていきます。
本日吹っ飛ばされていただくのは、
体重:60kg
吹っ飛ぶスピード:秒速5メートル
の方です。1秒で5メートルぐらい吹っ飛ぶので、結構痛いと思います。
(参考として空気の大砲で人を吹っ飛ばす動画を見てみましたが、秒速5メートルぐらいで吹き飛ばされた後、無傷で立ち上がっていたので、秒速5メートルならそこまで危険な速さではないと思います。)

準備計算

 まず、拳圧で吹っ飛ばされるのはどうしてかを考えます。これは拳で圧縮した空気の塊を飛ばし、相手にぶつけているからだと考えられます。
 そこで、空気の塊の重さを見積もりたいと思います。
空気を簡単のため、窒素8割と酸素2割で構成されているとします。窒素N2の分子量は28、酸素O2の分子量は32ですので、理想状態1mol(=22.4リットル)の重さは、
28*0.8+32*0.2=22.4+6.4=28.8グラム
よって空気1リットルの重さは28.8/22.4≒1.3グラムとなります。

空気のスピード

 ではまず、人を吹き飛ばす空気の速さを求めたいと思います。
人のパンチで打ち出せる空気の量は、パンチの際に腕が通過する部分程度であると考えられます。これをザックリ1リットルということにしましょう。1リットルの空気の重さは上述のとおり大体1グラム。これで60キログラムの人が秒速5メートルで動きだすので、運動量保存の法則から、空気の速さをvとすると、
(60*103) * 5 = 1 * v
v=秒速300キロ
ということが分かります。1秒間で東京から金沢まで行けるスピードです。
この時点で、既にやばそうですが、続けて腕の速度を求めたいと思います。

空気抵抗

 空気の塊が飛んでいく最中には、空気抵抗によってどんどんスピードが落ちていってしまいます。そのため、発射するときには、上で求めた速度よりももっと速くないといけません。空気抵抗をまじめに計算すると大学物理の範囲になってしまうので、上手いこと楽しようと計算したところ、空気塊の初速度が2*10864 [m/s]となり、光の速度を超えてしまい、さすがに間違っていると思うので、空気抵抗は割愛します。

パンチのスピード

 パンチする人も同様に体重60キログラムの人だとします。片腕の重さは体重の6%程度らしいので、この人の腕は3.6キロになります。(拳圧で人を吹っ飛ばせるならもっと腕がぶっといと思いますが…)
 前述のとおり、空気抵抗を無視して、空気の塊がそのままのスピードで向かっていくと仮定します。すると、パンチの速さをvと置けば、先ほどと同様に運動量保存を使って、
1*300*103 = 3600 * v
v=300/3.6=83[m/s]
従って、パンチの速さは秒速83メートルとなります。これは時速300キロにもなります。調べたところ、ボクサーのパンチは時速30~50キロ程度だそうなので、
まさに人類を超越した高速パンチが必要になりそうです。

最後に

 今回の計算は、わざわざ人‐空気塊‐パンチという図式にしましたが、パンチで出した威力がそのまま人に到達する理想的な状態のため、人‐パンチでも同じ結果になります。実際には空気塊の速度減衰が必要になってきますが、高校物理の範疇を超えてしまうため、今回は省略しました。
 ただのパンチで人を5メートル飛ばしているような図式になってしまいましたが、それでも相当の速度が求められますね。

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