ホーム デザイナー 3Dデザイナー 「次元が一つ増えることで表現は倍増する」今需要が高い3Dデザイナーと、3DCGの制作工程を紹介!
「次元が一つ増えることで表現は倍増する」今需要が高い3Dデザイナーと、3DCGの制作工程を紹介!
 

「次元が一つ増えることで表現は倍増する」今需要が高い3Dデザイナーと、3DCGの制作工程を紹介!

山田アイコ、発信します!
今回は、アピリッツで3DCG全般を担当している『立原 直喜』さんに、今需要が高いとされている3DCGの作業工程やその魅力について、気になることをすべて質問してきました!

立原さん、今日はよろしくお願いします。

こちらこそよろしくお願い致します。

お仕事中の立原さん

立原 直喜
2016年4月 アピゲー部デザイナとして入社。
入社後は、主に自社開発ゲーム「かくりよの門 -朧-」にて3D全般とムービーの制作、シェーダーやデザイナー向けツール開発、背景・UI・エフェクトのディレクションを担当。
趣味で洋楽メタルのカバーバンドを組んでいて、ラップやデスボイスが好き。

3Dデザイナーのお仕事について

早速ですが、立原さんの普段のお仕事について教えて下さい!

アートディレクション以外の自分で製作しているものでは、最近は3DCGを取り扱うことが多くて3DCGに関わるものならほとんどのものを作ってます! キャラクター、敵、背景、小物、セットアップ、アニメーション、などなどですね。

3DCGのデザイナーはアピリッツには多いのでしょうか?
私がプレイしているゴエティアクロスは2Dが主体でしたよね。

3Dのキャラクターが3D世界の中を動き回るような3DCG主体のリリースされているタイトルは、(2020年3月現在)アピゲー部のかくりよの門 -朧-だけなので、3Dデザイナーの人数も、まだ少ないように思います。

「かくりよの門 -朧-」

3DCGを取り扱う規模が大きくなりづらい理由は、技術的に難しいという問題があるからでしょうか?

それもありますね。
単純に皆さんが遊んでいる端末の性能が上がってきて、今までは3D表現の制約が多かったという物理的な問題。
技術的な問題では、縦・横に加えて奥行きという次元がもう一つ増える訳ですから、普通に絵を描くよりも扱う情報が単純に増えるのでハードルは高くなると思います。

技術的に難しいとすると、3DCGをやりたいデザイナーは少ないのでしょうか?

3DCGをやりたいというデザイナーさんはたくさんいます
3DCGの専門学校の卒業生の応募も多く、嬉しい限りなのですが、入社してから商業クォリティの3Dデザインができるようになるまでの習熟コストは2DCGよりもそれなりにかかってしまいますので、すごく慎重になってしまいます。
3D表現主体のタイトルで売り上げをもっとガンガン上げて人をもっと増やせるようにしたいですね~。

現在、3Dの新しいタイトルを制作中だと耳にしたのですが、よければ宣伝していきませんか?

宣伝したいのですが、まだ詳しくは言えなくてゴメンなさい。
ただ、『かくりよの門 -朧-』で培った技術を最大限に活かした新作の開発をバリバリ進めているので楽しみにしていて欲しいと思っています。

新作、楽しみにしてます!いつ頃リリースされる予定なんですか?

年内にはリリースのお知らせができたらいいなと思っています!

3DCGの制作現場

先程、3D表現主体のタイトルという言葉がありましたが、どんなゲームを指すのでしょうか?

まずプレイヤーが操作するキャラクターが3Dだったりします。
縦横、奥行きがある3Dオブジェクトが散りばめられた綺麗なステージで、その中をキャラクターが走り回ったり同じく3Dで作られた敵と戦ったりできるんです。
3D表現主体のゲームとは言っても、2DのイラストやUIを効果的に使うとワクワク感がより出ると思います。
良かったらこちらのプレイ動画を見てください。

「かくりよの門 -朧-」プレイ動画

わぁ~!楽しそうです~!!3Dの表現って2Dと違った味がありますよね!
こんな3DCGの技術について聞けると思うと、私もワクワクしてきました。

プロジェクト固有の工程は割愛して、ここでは基本的な作業をお教えしますね。

よろしくお願いします!!

3DCGの制作工程・モデリング

①モデリング
モデリングというのは、ポリゴンという面を使って形状を作ることです。

「キャラクターを描く」というのとはまた違うんですか?

たとえるなら彫刻や粘土細工に近くて、石から削り出したり、粘土を変形させたりするような感じですね。

モデリング

3DCGの制作工程・UV展開

②UV展開
3Dモデルの展開図を作るため、1つ1つのパーツ分けを行っています!
三次元座標xyzとは別の、テクスチャーのための二次元座標がuvです。

UV展開

こうやってペーパークラフトの様に展開していきます。
3Dのキャラクターに模様や色をのせる下準備です。

モデリングしたものにそのまま色を付けはできないのですか?

可能ですが、立体に対して絵を描くのって、かなり難しいんです……。
組み立てる前にペラペラの2Dにしてから色をつける方がやりやすいんですよ~。
色付けは次の工程なので、UV展開というのはバラバラにする作業です!

3DCGの制作工程・テクスチャー

③テクスチャー
3Dモデルに貼り付ける画像を作ります。
展開しておいたUVをもとに、顔や柄などを描いて色・陰影などを調整します。

先程の展開からようやく色付けですね!
影とかは自然にできるものじゃなくて、この時点で描いているんですね~。

照明によってつける陰影もありますが、描画負担の軽減などの為に今回のプロジェクトでは細かい陰影は描いちゃってます。

テクスチャ-

3DCGの制作工程・リギング/セットアップ

④リギング/セットアップ
難しい言葉になってしまうんですが、キャラクターに骨を入れる話です!
こちらをご覧ください。

うわぁ~!3Dキャラクターには骨があるんですね! しかもこんなにいっぱい……。

そうなんですよ。これは「骨を一つ動かすことで、どこが動くのか」というのを細かく設定する作業になります。
この設定をちゃんとしないと、骨をいくら動かしてもキャラクターが思い通りに動いてくれないんですよね。

どういう設定をしているんですか?

3Dモデルはポリゴンという面ででできていて、ポリゴンは頂点という点で構成されています。
このひとつひとつの点に対して「なんという骨の影響を何%受けるか」というのを設定していってます。

キャラクターを形成する点の1つ1つすべてに、設定をしていくということですか!?

もうわけわかんないですよね。
骨と骨の中間にある関節の頂点は、片方の骨の動きだけにくっついてきちゃうと変な動きになってしまうので、半々で影響を受けるように設定してあげるとか……慣れればある程度機械的にできるんですけどね。

これはものすごい時間がかかりそうな作業ですね~。

そこは3Dソフトの機能やテクニックで工夫をしています!
骨による動きを調整したら、次は「IKの設定」といって骨を動かしやすくするための作業もありますが、あまりに専門的すぎるのでまた別の機会に……。まあキャラクターを動かす準備ですね。

リギング/セットアップ

3DCGの制作工程・アニメーション

⑤アニメーション
先程の動かす準備が整ったものを動かしてみます!
キャラクターのポーズや表情を作って演技させます。
髪や服の揺れはコンピューターの自動計算でも表現できますが、今回は手作業でアニメーションさせています。

アニメーション

動いた!
どうやって動きを付けているんですか?

キーフレームを設定して動きを付けています。
キーは「基点とか重要」フレームは「時間」という意味と考えるとわかりやすいかもしれません。
タイムラインに始点、中、終点のようにキーフレームを設定して、このポーズからこのポーズにアニメーションをつけてーーと細かく設定します。

この表情もコロコロ変わっていますが、どうやって細かく目を開けたり閉じたりさせているんですか?

表情はテクスチャーとして用意していたパターンがあって、同じくキーフレームに「ここでこの表情に切り替える」と設定していきます。!

表情のテクスチャー

今回はデフォルメが効いたテイストのキャラクターなので、目や口単体で細かく動かすのではなく決められた表情パターンをあらかじめ描いてしまいます。

例えば先の動画なら「着地したタイミングのフレームで、目を閉じた絵に切り替える」という感じで設定しています。

新作の3DCGを制作中の立原氏

使っているツールは?プロとは?

なるほど……だんだんわかってきたような気がします。
ちなみにアピリッツでは何のソフトを使っていますか?

主に「Maya」というソフトを使っています。
でもちょっとお高めなので家でも3DCGをやりたいなと思っている方は「Blender」という無料のソフトで練習しているようですね。

そういえば、個人でも3DCGのゲームを作っている方はいますよね?

いますね~!
学生でゲーム作って売ってるのを見ると独学だろうによくぞここまで……と感動します。

会社と個人の差はどこにあるのでしょうか?

企業の製品クオリティは、定められた世界観を表現する為の高い技術水準が求められます。それにリソースのボリューム(作成する素材の数)も必要で、開発規模がかなり大きくなりがちです。デザイナーもアートディレクターも非常に大変なのですが、それゆえ学べる事もたくさんあります!
例えば、仕様に沿っていてかつ見た目パフォーマンスも良い3Dデータを量産するのは、実務経験がないとなかなか難しいと思います。

本人がどこを目指すか次第にはなってきますが、そういった売り物になるようなハイレベルな3DCGを学びたいなら実際に企業の案件に携わってみるのが良いと思います。

3Dデザイナーその先も

アイコも3Dデザイナーが気になってきました!
では、どんな人が3Dデザイナーに向いているんでしょうか?

ゲームの3DCGの場合、見た目の良さを求めすぎて重いデータを作ってしまうと、
処理しきれなくて動作がカクカクになったり、ハード本体が熱くなっちゃったりと、実写映画やアニメなどと比べて制限が多いんです。
制限の中で、見栄えを良くしたり面白くしたりする工夫をするのを楽しめる人が、ゲームの3Dデザイナーには向いてると思います。

未経験でも、3DCGを担当させてもらえるのですか!?

もちろんです!
今の3DCGメンバーも全くの未経験からのスタートで、大体3ヵ月~半年で段々慣れてきてという感じでした。

専門的な勉強が必要そうな技術ですが、立原さんはどうやって技術を身につけられたのでしょうか?

自分は専門学校で基礎を学びましたが、先ほど言ったような無料で使える3Dソフトで練習したり、3DCGに関する映像やゲームに触れたりして、センスや関心を高めておけば事前の専門的な勉強は必ずしも必須ではありません。

ええっ!専門的な勉強がなくても大丈夫だったなんて……意外です!

でも、絵心があると有利ではあります。
自分が使う絵筆に詳しい人の方が優位なのは当然で、3DCGもあくまで絵筆のひとつですから。
あとは、プログラムができたりするのもいいですね。

え、デザイナーなのにプログラム?
プログラムはどんな場面で使われるんですか?

例えば、立方体のサイコロを1個作る作業があったとして、それを100~200個作ってくださいと言われたとき1つ1つ作るのなんて途方もないですよね?
必須ではないんですけど、 プログラムをかじっていれば、手作業では不可能な物量をこなせたりします。
特に出世したい人はプログラムができるといいですね。

プログラムができると出世するんですか!?

例えば「人の3倍作業ができます」という人がいたとしても、その人がチームを離れてしまえばチーム全体の作業効率は大きく下がってしまいますよね。でも、その人が作業効率3倍アップのプログラムを書いてチーム全体に配布すれば、その人がいなくなったとしてもチーム全体の効率は大幅に上がります!
自分としても生産性を上げられる人は貴重だと感じています。

もしかして、立原さんもツールを作ったりしていますか?

はい! 色々なツールを作ってチームをどんどん効率化させていってますよ!

立原さんがまとめていた工程のまとめ資料(すごく丁寧で詳しく書いてありました)

資料もすごく細かくて丁寧ですね。きっと、作成するのに相当時間がかかったのだろうなと思います……。

出来ることが増えるって喜びだと思うので、それを分かち合いたいんです。
もし自分が関われるのなら、持っている技術をできる限りすべて伝えたいですし、僕も学んでいきたいです。
3DCGって、やることが多い分『できなかったことができるようになる喜びを感じられる面』がたくさんあるんですよね。

次元が増えることで表現方法が倍に

ちなみに、立原さんは3DCGで何を作っている時が一番楽しいですか?

有り体ですが、3Dで作る事は全部楽しいです!!
ポリゴンでモデルを作るのも、テクスチャ描くのも、アニメーションつけるのも、3Dエフェクト作るのも、ツール作るのも好きです。
やることが多い分、それぞれに楽しみを見出しています。

「全部楽しい」と嬉しそうに語る立原氏

その笑顔でそんな発言ができるなんて、憧れちゃいます!
アピリッツで3Dデザイナーとして働くとどんな良いことがありますか?

アピリッツの3Dデザイナーは全ての工程を体験できます!

大企業だと分業化が進んでいて「3DCGがやりたくてなんとか入社できたものの、ずっと限られた一部の作業しかできない」といったケースもあります。
でも、アピリッツでは全ての工程を知った上で長所を見つけて欲しい。ある程度は何でもできるような人になってほしいという思いがあるので、キャラクターを作ってテクスチャ描いて、それを動かしてと、一通り体験してもらうんですよ。

そもそもキャラクター制作はとても人気なので、メインキャラのモデリングからアニメーションまで一通り触らせてもらえるようなところはそう多くはないと思います。もちろん世界観作りが好きなら背景でも、モンスターに興味があるなら敵キャラでもいいですし、希望があればその工程について一通り学べます!

自分の希望したものをしっかり学ばせてくれる環境ができているというのはとてもいいですね!

最後に、3DCGの魅力を教えていただけますか?

やはり立体であることですね。
一枚絵って正面から描いたものの場合、後ろとか見せようがないじゃないですか。
でも3Dモデルは360°どんなアングルも対応できていろんな事ができるんです。
奥行きがあることで臨場感や没入感を生み出せたり、三次元ポリゴン情報を使ったユニークな表現ができたりと、表現方法も倍に増えます!
3DCGで表現の幅を更に奥深くしましょう。

仏のように優しいが、かなりメタルな趣味を持つ立原氏
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