今回は社内の成果発表会「P-Review ’19」にて発表した、プランナ 栗山 春樹さんの資料を紹介します。 ※記載内容はすべて個人の意見・研究内容であり、会社の見解ではございません。
栗山 春樹 2019年4月アピゲー部プランナとして入社 入社後は自社開発ゲーム「ゴエティア」を担当
PR19-H-kuriyama-3.pdf栗山さん-3
テーマ説明
(※挨拶省略)
早速ですが、こんなことに悩んだことはありませんか?
・ゲームの「オモシロサ」には自信があるけど知名度がない…… ・広告を打ちたいけどお金が無い…… ・広告の効果に半信半疑だからお金をかけたくない…… Etc……
特に広告とお金の心配って結構あると思うんですよ。 そこで僕は考えました。タダ で効果的な宣伝を打てばいいんじゃないかと… なので今回はこのテーマはこちらです。
「どうやって、タダで効果的な宣伝を打つか」
ただ、皆さんのほうが僕より何倍も経験があるため、新卒の自分の考えた方法はここで話しても説得力がないですよね。 なので今回は、海外のインディーズゲームから例をお借りしたいと思います。
インディーズというものが何か、わからない方もいるかと思うのでわかりやすく説明します。
インディーズとは
・日本でいうところの同人ゲーム ・開発は小規模で特定の企業には属しておらず、大手パブリッシャーとの契約は無い ・プロダクトアウト思考で基本的にマーケティングで何を作るかよりも先に製品を作っちゃう ・「Indiepocalypse」という過当競争が続いていており、インディーでも生き残っていけないという状態が続いている
ざっというとこの人たちは、製品以外何もない状態 で戦っているという訳です。 そんな大変な状態の中でもゲームのヒット作品って結構生まれてるんです。
PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS/Goat Simulator/Guacamelee !/D ESCENDERS
こういう人たちはどうして成功しているのか?どういう風に宣伝を打っているのか? というのを気になって調べたのでそれを皆さんに共有していこうと思います。
友達にLINEでゲームを宣伝する
友達にゲームを宣伝するってことはわかりやすく”あなたのゲームの魅力”を伝えることだと思うんですよ 海外のインディーゲームの例を紹介します。
About a Blob とGucameleee! は同じ開発会社が作ったものなんですけど、ざっくり見てください。
❖About a Blob ・スライムが主人公の横スクロールパズルゲーム! ・障害物を乗り越え、仲間を救い出しましょう ・24個のステージ ・沢山の実績とチャレンジを用意しました!
❖Guacamelee! ・決して戦闘が絶えることが無いアクションゲーム! ・2つの異なる世界、「死」と「生」の世界をボタン一つで行き来しましょう! ・魅力的な過去を持つボス、特殊な敵が大量に登場します。 ・ニワトリ……沢山のニワトリが登場します。
About a Blob の広告は抽象的で、売りがちょっとわかりにくくないですか? ゲームの売りが分からないから興味が湧きにくいと思います。
2つ目のGucameleee! は何を売りにしているのか、このゲームの面白さは何かを明確に伝えることができてると思います。
だからAbout a Blob に比べてGucameleee! は売り上げ差で言うと10倍くらい売り上げが違ったんです! この事例から分かるのはゲームの面白さを明確に伝える ことってめちゃくちゃ大事 ということです。
特に勘違いされやすいのが、開発が考えるゲームの魅力とユーザーにとっての魅力って全然違ってHooker(引き) とKicker(掴み) っていうとらえ方をしてる海外の方が多いんですけど、まず広告で重要なのは引きをアピールすることが大事だと思うんですよ。 引きの大枠をとらえると直感的に理解・想像しやすいもの、次に他のゲームとあなたのゲームで明確に差別化できている点、そして既にゲームをリリースをしている場合はあなたのゲームをユーザーがどういう風に評価してくれているのかというのを理解して広告打つのが重要だと思います。
うちのゲーム、ゴエティア で参考の例を出してみます。
A.ひとりで遊ぶことはもちろん、多人数のプレイヤーで協力しながら同時に遊ぶこともできるマルチバトルRPGです。
B.好きなキャラクターも限界まで育成出来るマルチバトルRPGです。育成次第ではどんなに強い敵でも一撃で倒せます。
Aは実際にプレスリリースとかゲームの公式サイトに打ってある広告で、Bは僕が考えた広告です。
正直な話自分で言うのもなんですが、AよりもBのほうがもっと面白そうじゃないですか? なぜならこのゲームの一番の面白さををより明確に伝えることができている 。 さらにそれに対して、ほんとに育成次第ではどんなに強い敵でも一撃で倒せるという他のゲームにはない面白さをしっかり提供できている んですよ
自分のゲームの面白さを明確に伝えるっていうことはすごく重要なことだと思います。
好きなキャラクターも限界まで育成出来るマルチバトルRPGです。育成次第ではどんなに強い敵でも一撃で倒せます。
貴族を仲間にする
皆さんPUBG (PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS)ってご存知ですか?
PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS
今でこそインディーとは言えない規模に成長しましたが、はじめはすごい小規模な開発チームから始まり、広告費もほとんどなかったんです。
このゲームがやったすごいことはAlpha1~リリースまで全てストリーミングを許可したんです。 ここで重要だったのが、Alpha~Closed betaは会社側が招待しないと参加できなかったんです。 ですが、ストリーマーが参加したいと言ったらすぐにキーを渡していました。
この結果どうなったかというと・・・
Closed betaへ招待された方達は「自分は特別な存在なんじゃないか」と思いゲームに対して貢献してくれるロイヤルユーザーになったんです。
さらにAlpha~リリースまで、運営はユーザーの意見をちゃんと聞いてどんどんゲームが良くなっていってるのを生放送し、このゲームはどんどん向上していくんだなっていうことがユーザーに伝わ運営への信頼に繋がりました。
なので、ストリーマーがたくさんいて運営側も信頼されているということで、リリース前から既にゲームを遊びたいというユーザーが大勢いました。
インフルエンサーを味方にする
あなたのゲームを広告してくれる有名人を味方にすることってものすごく重要なんです。 何をするかというとインフルエンサーに特権を与えてそれを話題にしてもらうんです。
継続的に”あなたにしか与えていない特権”を提供することにより、その人を単純にゲームを広告しているという意識から、「私たちがこのゲームを面白くする役割を担っているんだな」 という当事者意識をしっかり持ってもらうことができます。
さらにそれだけではなく、これに対して重要なのがインフルエンサー側にもしっかりとメリットを提示することで、あなたのゲームの面白さを伝えることで視聴者数が増えますよとか他にない特典を得ることができますよっていうのが重要です。
そういう人を味方にするのはどういうことかというと、勝手に宣伝してくれる んですよ 例えば声優さんなら「私のキャラクターこんなのが出ましたよ」とか、絵師さんだったらそのキャラクターの絵をいっぱい書いてくれたりとか、そういう風に勝手に宣伝してくれるのでまず損はないかと思います。
そして、友達ができる これはほんとの友達というよりも、ビジネスパートナーができるということです。 一緒に作品を作っていくという上で、今後の作品も手伝ってくれるビジネスパートナーができるというのは非常に大きい点かと思います。 これらを用いて具体的に何をするのかというと僕はこんなことを思いつきました……。声優さんにリリース前のキャラクターを先に渡す!!
(左から)コスプレイヤー:立花 はる(ふとんちゃん)様/声優:山根 絢様/声優:相沢 舞様
うちのゴエクロで生放送をしてくれている声優さんがいるので、その人達に新しいキャラが出る時は先に渡してそのキャラクターに対してツイートしてもらうとか…… 生放送でこういう使い方があるんですよねっていうのを言ってもらうとか…… 公式のアカウントよりも声優さんの方がフォロワー数が多いのでインプレッション数が稼げます。 そして、声優さんや絵師さんって絶対に1回は自分の書いたものを宣伝してくれるんですよ。 最初渡した時にまず宣伝してくれると思うので1回 さらにリリースされたタイミングでもう1回と、運が良ければ2回 宣伝してくれるので効果はあると思います。
ユーザーと仲良くする。
Descenders という例を紹介します。 Discrdっていう海外のチャットツールでユーザーと運営が積極的にコミュニケーションをとりあったんです。
運営はユーザーのゲームに対するフィードバックに実際にテキストで答えて、さらにそのDiscrdに参加してる人に限定的な特権を与えました。
その結果何が起こったかというと、ユーザーに対するコミュニティが活性化して、新しいユーザーが一番最初に触れるコミュニティが盛り上がっているように見えたんです。
「今何が欲しいのか」」「どこが面白いのか」 ユーザーのニーズを正確に把握できるようになり、ユーザーが求めている提供ができる”良いゲーム”ということで、口コミからもゲームは広がっていきました。
ユーザーと仲良くすることは重要だよっていうことです。
ユーザーとの距離をなるべく近くする
・運営とユーザーがコミュニケーションを取れる場所を設けて、運営側からユーザーに問いかける 運営が「今何が欲しいですか」「今このゲームのあなたが楽しんでいるところは何ですか」と問いかけ、さらにそれに対して・・・
・ユーザーの意見を聞いていることをアピールする 一方的に答えをもらうのではなく、ちゃんと僕たちはあなたの話を聞いているんですよっていう感じで双方でコミュニケーションをとっていくことが重要だと思います。
実際にはこんなことが行われている
・日常的なことをキャラクターになりきって呟く 「今日は暑いですね~」とかキャラクターになりきってTwitterでtweetした。
・Twitterでゲームに興味があると呟いてる人にDMする ここまでやるとすごいんですけどTwitterとかで「ゲームに興味があるよ」って呟いてる人がいたら「今僕たちのゲームはこんな特権与えますよ」とか「今このリンクから押せば10連ガチャ一回無料で引けますよ」みたいなことをDMしてユーザーを勧誘していた。
・ユーザーの絵をゲーム内のスタンプにした ユーザーが実際に二次創作で描いてくれた絵を「これはすごく素晴らしいデザインなんでぜひともゲーム内に入れたい」と言ってゲーム内のスタンプにした。
派手なことのやり方3条
派手なことでとりあえず皆に周知してもらうっていう戦略をとりたがる人は多いと思います。 GoatSimulatorっていうのが、めちゃくちゃ派手な広告を打ったんですよ。
その広告のプロデューサが「この3か条をとりあえず守りましょう」と言いました。
1.ゲームを遊んでいる人にしか理解できないコンテンツは使わない そのゲーム内でめちゃくちゃ価値のあるものを大量に配りますよって言ったところで結局あなたのゲームをやってないユーザーには効果がないんです。
2.ゲームと関係なさすぎることはあまり意味がない 実際の例になるんですけど、FPSを作っているのに「ネックレスを配りますよ」とかはたしかにTwitter内でRe tweetされると思いますが、それは”ネックレスが欲しい人”であってゲームに対して興味を持ってくれるユーザーではないのであんまり意味がないことです。
3.詐欺と思わせるようなことはやらない(騙す) Twitterにて、「このtweetが1万リツイートいけば箱が開いて中から特別なものが出ますよ」と言い、いざ開いたら期待外れなものを出してしまったんです。 それに対してユーザーは騙されたと思い、ゲームを遊んでないのにゲームに対する悪い印象が定着しちゃったんですよ。
そういうことは絶対にやらない。
まとめ
皆さん、このプレゼンなにか新しい発見はありましたか?
……正直なにもないと思います。 だって考えたらこれ、めちゃくちゃ普通 のことなんです。
ユーザーと触れ合ったり、声優さんと仲良くしたり、宣伝を打つ文言を考えるなんて、ユーザー視点からするとめちゃくちゃ普通のことなんですよね。
ですが、これはどのゲーム会社でも、なかなかできることではないと思います。 だってユーザーに毎回DMを送ったり、お問い合わせに丁寧に返したりするのって正直面倒くさいことで、とにかく大変なんですよね。 ですがそういう大変で地道なことを、しっかりやってるところのゲームが結局売れるんですよね。
僕が調べた海外のプレゼンターが毎回言ってました「別に僕の言ったことは面白いことじゃない、めちゃくちゃ当然なことだけど、そういう当然なことをやろう」ざっくりいうとゲームを売りたいんだったらどんなに大変でもやらなきゃいけないよ!!っていうことです。
僕は今回発表したような方向で、効果的な広告を打つ試み をしていきたいと思ってます。
ご清聴ありがとうございました。
ポーズを頼むと箱ティッシュを持ち出したり、謎のサービス精神がある栗山氏。
当然なことだけど、そういう地道なことが大切なんですね……。 アイコも地道に頑張るぞー!