目次
アピリッツは2020年11月1日に「クラウドインテグレーション部」を新設しました。「DX推進のためのクラウドインテグレーション」を謳うこちらの部署の設立背景や展望について執行役員の西脇学とクラウドインテグレーション部 部長の剣持大介がお話します。(2020年10月 取材)
サーバは社員の足元に転がっているほうが安心?
執行役員 西脇学(以下、西脇):クラウドインテグレーション部のお話の前に、雑談がてらちょっと教えてもらいたいのですが、今、クラウド技術の市場はどんな感じですか?
クラウドインテグレーション部 部長 剣持大介(以下、剣持):オンプレミス環境からクラウド環境への移行(=マイグレーション)のニーズが高いです。ただ、監査やセキュリティの観点から二の足を踏んでいらっしゃる企業様も多くいらっしゃいます。
西脇:ああ! わかります! 会社の規模を問わず「サーバが社内のどこかにあるのはOK。でもクラウドはダメです」という企業様は昔から少なくないんですよね。
そういった方に「なぜ社内にサーバがあるのは大丈夫なのですか?」とお尋ねすると、「みんなが見えるところにあるから安心」という答えをいただくんです。これが昔からすごく不思議で。
僕としては、セキュリティの観点から言うと、会社のどこかや担当者の足元でサーバがゴロンと転がってるほうが危ういんじゃないかなと思うわけです。
剣持:一人で何もかも出来てしまうリスクはありますね。
西脇:でしょ? 誰でもさわれちゃうし、目の前にサーバの端末があったら何がどこまでできるかわかっちゃう。だから、クラウドのようにそれぞれの担当者の「できること」を限った状態のほうが、安全性の思想としてはより堅牢だと思いますね。
“三菱ショック”から潮目が変わった
―― クラウドへの抵抗もありつつ、それでも新規のお話は全案件クラウドです。やはり流れが変わりつつあるのでしょうか。
西脇:はい。ゲームチェンジがおきたなと肌で感じたのは2017年1月の“三菱ショック”ですね。これは三菱UFJフィナンシャル・グループがAWS(Amazon Web Service)を採用した、って話なんですが、当時国内の、とくに歴史ある企業に衝撃が走ったわけです。
三菱ショック以来「AWSに全力で行きます!」という流れができました。すぐさま“クラウドユーザー向けサイバーリスク保険”が登場したり。
剣持:さらにSIPサーバやVoIP系の機能がクラウド上で使えるようになり、オンプレミスでなくてはならない要因が減りました。これによってAWSに移行しても大丈夫という流れもできたと感じています。
DXの波で「AWSに詳しいからアピリッツに発注する」となった
―― 「クラウドインテグレーション部」を設立したのもそういった流れをうけて、ということでしょうか。いつごろ「部署を作るぞ!」となったのでしょう。
西脇:もともとクラウド導入事業をアピリッツはやってきたのですが、それは、クラウドのみを扱う専門業者としてではなく、アプリケーションを動かすためのものでした。
剣持:「アプリケーションのアピリッツ」、ですからね。
西脇:そうそう(笑)アプリを作って動かすためには土台が必要で、インフラとしてAWSも当然欠かせないよね、技術を磨かないとね、というスタンスで長年やってきました。
ですから、オンプレミス環境からAWSへの移行は、アプリケーションの開発・移行とセットだったんです。大手メディアサイトさんの大掛かりな移行ですとか。
最新のマイグレーションの手法に則って仕事をするので、クラウド導入の経験値もたまります。
やがて「アプリケーションに加えて、とにかくAWSに詳しい人が必要」というご要望を頂戴することが増えました。「アピリッツにはAWSに詳しいエンジニアがいるから」という理由で仕事が発生するんです。
なので、剣持さんや浅田さん(※2020 APN AWS Top Engineers)などベテランのエンジニアたちはそれらのプロジェクトに関わってきました。たとえばAWSの新機能を使う時は浅田さんに必ず入ってもらったり、みんなで解決してきました。
剣持:この流れは2018年頃から予兆があって、2019年には需要の高さがはっきりしました。
西脇:そうだね。で、2020年のDX推進のビッグウェーブが来たわけです。経産省のDXレポートの影響力は大きかった。毎日いろんなDX関連のニュースが出てますよね。補助金が出ますよ、関連銘柄がストップ高ですよ、とか。
結局、ずっとインハウスで抱え込んでいたものをクラウドに載せないと、もう自分たちのビジネスは世の中の変化の速度についていけない、ヤバい、って認識され始めたんですよね。
AWS、GCP、あらゆるクラウド技術を提案する
―― アピリッツでもDX支援のためのデジタル人材を育成していまよね。
西脇:はい。古くからお付き合いのあるAWSはもちろんのこと、アピリッツはGCP(Google Cloud Platform)のパートナー認定も取得しました。
AWSやGCPはこれからも進化していくはずです。技術に対する投資規模がまるで違うのですから、そこを私たちが活用しない手はありません。勉強を続け、お客様のビジネスにとって最適なものを提案できる状態を常に保つ。そういったことがアピリッツの役目です。
……という経緯で、まずは専門チームをかためて育成もする部署を作ることにしました。やっとクラウドインテグレーション部の話になったね!(笑)
剣持:ゆくゆくは、部にとどまらず「アピリッツ全体の仕事のやりかた自体、クラウドインテグレーションが基本」とお客様からご認知いただけるよう進めたいです。
クラウドインテグレーション部にいてほしい人
―― 西脇さんにお尋ねします。剣持さんを部長に選出した理由は何でしょうか。
西脇:まず、古いシステムを扱える経験値があることです。さらにクラウドの経験値もある。マイグレーションって、いわゆるレガシーなものをクラウドに移す場合だってあります。ですから、若い人たちと古いシステムを紐解いて、最新のクラウド技術と適合させていく舵取りにふさわしい人物だと考えました。
剣持:今、世の中では「最初の一歩のDX」の需要が高い。なので、まずは私が「橋渡し」となって、そこをドンと打ち出していきたいです。
西脇:僕らはマイグレーションをやったあとも、DXを進めるお付き合いがしたいです。まずはDXの入り口として必要なことをご提供して、次にやるべきことに対応できるよう備えるのが、私たちの使命だと考えています。
剣持:アピリッツの強みは「Webアプリケーションをワンストップで」提供できる点です。開発、UX/UIデザイン、コンサル、Webマーケティング、すべてをご提供できるのがモットー。これからは「DXをワンストップで」ですね。
西脇:一方で「すべてをモノリスにアピリッツがやる」というのではなく、お客様のオーダーにあわせて、外部の会社さんと一緒にやっていくことも柔軟に考えます。それって「必要なものを必要なだけ」使えるクラウドサービスと似てますよね。
―― クラウドインテグレーション部をどんなチームにしたいですか?
剣持:いろんなサービスやクラウドや基盤の技術があります。それらを最適な形で組み上げられる レゴブロックのように組み合わせられる部署にしたいです。
ですから、一点に詳しいだけじゃなく、いろんな知識を持ち、それらを組み合わせる想像力のあるエンジニアが理想です。
西脇:そうだね。「最初からスクラッチ開発を前提に設計するんじゃなく、これ使えば解決できるんじゃね?」という閃きで突破する人が必要ですね。「あるならもってくる、なければ作る」ってところもクラウドの思想と近いかもしれません。
「そのままのアナタでいて!」と願っている
―― クラウドインテグレーション部が求める仲間のイメージがつきました。他に求めることはどんなことでしょう。
剣持:西脇さんのように「しゃべれる人」ですね。お客様と共に課題に取り組むわけですから、いろんな人を説得する局面があります。
ですから、単にトークスキルが高くて陽気、という意味では当然なくて(西脇・苦笑) 。本質的な理解とアウトプットができることを求めます。お客様のビジネスを損なわないレベルでアウトプットができることは、エンジニアにとって大きな強みです。
―― そういう人はどうすれば育つのでしょうか。
剣持:まずは視野の広さが大切です。面接でもそこを重視します。
西脇:自分の場合は、多能を目指したわけじゃなく垣根がなかった。とにかく、やらない理由や、やらない仕事は作っちゃダメです。
スポーツと一緒だよね。だって、サッカーでフォワードが「俺、キーパーじゃないからキーパーが何する人か知らん」とかありえないでしょ? 全部合わさってサッカーなんだから、全体理解を持った専門性じゃないと。他の仕事を理解しないヤバさってそういうこと。
IT業界に慣れれば慣れるほど、専門職だから専門外には関わらなくて良い、という傾向になりがちな気がしています。
なぜなら、新卒の研修で彼らにキャリアデザインを書いてもらうと、多くの子は複数のことをやりたがるんですよ。もちろんスペシャリストとして突き抜けていく人は絶対必要ですし、素敵なキャリアですが、そうじゃない人はデザインやマーケティングにも興味を持つ。
もうね、「そのままのアナタでいて!」と思います。それこそが多能の可能性ですから。
剣持:我々が目指すのは「クラウドインテグレーション」です。クラウド専門部隊と思われるかもしれませんが、むしろ逆で、「クラウドに持っていく理由を考える」チームです。
お客様と一緒に考え、並走するには、お客様のビジネスやシステムを理解する力と、最適化を考える企画力が必要です。弱点を強みに変えるチャンスを考えて「なんとかする」んです。そこに多能の要素は求められますし、鍛えられます。
DX推進の波を乗りこなし「機を見るに敏に動く」チームにしていきます。
関連記事:アピリッツのその他の役員インタビュー