この記事はアピリッツの技術ブログ「DoRuby」から移行した記事です。情報が古い可能性がありますのでご注意ください。
アニメやゲーム等、どこかで聞いたことありそうな物理学ワードを、生まれた背景や意味などを添えて集めてみました。意味が分かることで、より世界観を楽しめるようになるのではないでしょうか。
シュレディンガーの猫
恐らくこの記事で最も有名な物理学ワードです。
これは、量子力学という分野において、粒子の状態が1つに決まらないことを元にしたパラドックスになります。
日常的に考えると、物事の状態は必ず一つに決まっていきます。(コインを投げれば表か裏かのどちらかに決まる、など)
しかし、量子力学の世界では、小さな粒子は複数の状態の重ね合わせで表現され、人間が観測するまで状態が決まりません。これが日常的認識と大きく違っているために、この量子力学を批判する次のような逸話が生まれました。
「Aの状態とBの状態の重ね合わせで表現される粒子があり、Aの状態になると毒ガスが出る箱を作って、猫を閉じ込める。
すると、箱を開けて観測するまで、粒子はAとBの重ね合わせなので、猫もまた生きている状態と死んでいる状態の重ね合わせになってしまう。」
※これは思考実験であり、実際に猫が犠牲にされた実験ではありません。
これがシュレディンガーの猫と言われるパラドックスです。
猫の生きている状態と死んでいる状態との重ね合わせという、日常的にあり得ないことが起こってしまう、と批判している文言なのですが、非常に小さい粒子の状態を、猫という大きなものへ影響させるということは、現代の技術でも発展途上のため、この話の真偽はまだ分かりません。
ディラックの海
これも量子力学の分野の話です。
ディラックという有名な物理学者が、量子力学の世界での粒子の状態を表す式を導き出しました。しかし、この式ではエネルギーがいくらでもマイナスの状態である粒子が存在しても良いことが分かりました。粒子の性質として、エネルギーが小さい方へ行く性質があるので、これでは実在する全ての粒子がマイナス状態へ落ちていってしまう、と懸念されました。
これを説明するために、「マイナスの状態はすでに粒子が満員状態になっている」という概念を提唱しました。
これがディラックの海と呼ばれるものです。これらは、のちに別の理論によって解決され、ディラックの海は不要となってしまいました。
エントロピー
これは単純に物理学用語です。
エントロピーは物事の状態の「散らかり具合」を示す量で、物理学だけでなく、情報理論にも用いられている概念です。
このエントロピーは増える方向(散らかっていく方向)にしか動かない性質があり、エントロピー増大の法則と言われます。
(局所的にはエントロピーは減少することもあり得ます。しかし、全体で見れば増加しています)
マクスウェルの悪魔
これは物理学だけでなく情報理論にも関わるお話です。
空気の温度は、空気中の分子の温度の高いモノと低いモノの平均で出来上がっています。そこで、マクスウェルという物理学者は次のような思考実験を考えました。
「仕切りで2つの部屋に分けた箱を用意し、温度の高いモノを右の部屋へ、低いモノを左の部屋へ移すことが出来れば、何も特別なこと(「仕事」と言います)をする必要もなしに部屋の温度を上げたり下げたりできるのではないか。」
この思考実験は、上述のエントロピー増大則に反するため、注目を浴びました。
文中の、「熱い分子と冷たい分子を見分ける存在」が、のちにマクスウェルの悪魔と呼ばれるようになりました。
この問題の解決には、物理学だけでなく情報理論の助けも必要でした。
この見分けている悪魔が、何の仕事もしていないように見えて実は仕事をしていたのです。この悪魔は粒子状態の情報を取得し、次の粒子を観測するために、前の情報を消去する必要があり、この過程で仕事をしていることが分かったため、結論として熱力学の法則と矛盾しない、ということが分かりました。
ラプラスの悪魔
物理学というよりは少し哲学的なお話です。
止まっている物Bに、物Aがぶつかって物Bを吹き飛ばしたとします。この時、物Aと物Bの重さ等の性質が分かっていれば、物Bがどのぐらいの速さで吹き飛んでいったのか計算することが出来ます。
つまり、物同士がぶつかる前からその先の未来を予言できてしまうわけです。
これの究極的な主張として、
「現在の、この世の全ての物の状態が分かってしまえば、この先の未来全ての状態が分かってしまうだろう。また、逆に現在より過去の全ての状態も分かってしまうだろう。」
ということを数学者ラプラスが主張しました。のちに、この世全ての状態を知っている存在が、「ラプラスの悪魔」と呼ばれるようになりました。
これは、この世のすべての出来事は決まっていることなのだ、という決定論的な考えにも見ることが出来ます。
現代では非常に小さい粒子の挙動は確率で記述されるため、起こるまで分からないという見方がされています。
一方で、確率変動で世界が分からないのではなく、粒子が取り得る状態の数だけ世界が分岐しているという見方もされています(エヴェレットの多世界解釈)。
終わりに
いかがでしたでしょうか。結構聞いたことがある言葉が多かったのではないでしょうか。
これで今後の創作物にこのようなワードが出てきた時も、にやにやしながら世界に浸ることが出来ますね。