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    【ゲーム制作の現場から】 02:世界観設定のコト始め
     

    【ゲーム制作の現場から】 02:世界観設定のコト始め

    前話「01:RPGシナリオのコト始め」の続きです。今日はゲームシナリオの梁(はり)となる、世界観設定の考え方について書いてみます。

    ■世界観設定とは、なんぞなもし

    ◎ 情報は大きなカテゴリー分けから始めよう 

     有名ファンタジーRPGのポスターや広告、パッケージ。
     ひと目みれば、どんな世界なのか、ガツンと伝わってきますよね。

     表現内容を分解すると、メインビジュル、ロゴといった画像情報
     タイトル、キャッチコピー、会社名などのテキスト情報があるはずです。

     世界観を伝えるために、視覚的に飛び込んでく情報の構成とは?

     見て感じる「ビジュアル」、読んで理解させる「文字情報」。2つの大きなカテゴリーに分類できるのです。

    ◎ 情報構造体の把握

     例えば、「崖に立つ少年が遥か遠くの城を見つめる」ファンタスティックなビジュアルがあったとします。(いい感じのビジュアルを、頑張って想像してください。)

    何もないとイメージが沸かないかもしれませんので、叩きを……カキカキ

     どうでしょう? 「なぜそう感じたのか?」を分析。構造体を意識すると、ふわっとした印象から、さらに世界が見えてくるはずです。

     少年は何者なのか? 生い立ち、家庭環境、なぜそこにいるのか?

     少年の”物語”を表現するために必要な、彼が生きる文明・文化、自然の世界構造(ワールドストラクチャー)を決める。

     それが「世界観設定」です。

    ◎ 視覚情報の整理

     では「崖の上に立つ少年が、森林の彼方に建つ白亜の城を見ている」という設定を立て、具体的な情報に落とし込んでみます。

     描かれている地形から場所、天候から時間、登場人物の見た目から年齢、装備や装束の小道具から身分や役割(職業)、といった構造を整理できます。

     ※シナリオにおける、人間や物事との相関関係は「キャラクター設定/舞台設定」と定義します

    ■世界構造を考える前に認識しておくべきこと

    ◎ 舞台があって登場人物があらわれる

     先例に出した少年がゲームの主人公で、剣と魔法の世界の住人。「騎士試験を受けるため、都に向かっている」とします。

     これを大カテゴリーに分けると、「場所」と「登場人物」になります。

     舞台があって、そこでキャラクターに(ゲームシステム上で)芝居をさせる。ゆえに、世界構造を決めるには、ふわりとでも脚本(シナリオ)も考えている必要があります。

     登場人物の設定があり、「どんな物語が何時(いつ)何処(どこ)で展開されるのか?」適切な場所と時間を選び、舞台を用意するのです。

    ゲームでは舞台も役者も自在に作れるが、芝居に苦労する

     さて、さきほどのイラスト例を思い出しください。
     少年のビジュアル、舞台に必要な要素をイメージして、世界構造を考えてみましょう。

    ■自然環境に適応しながら、文明は育った

    ◎ ひとの世界は複雑系

     「少年が騎士試験を受けに行く」シナリオ設定なので、軍の規模・存在理由は必要となります。

     人を描くのですから、人物像があり、生い立ちに沿った衣食住の文化が根付いています。その地域の何を食べて、どんな言語や文字を使うのか。自然環境にあわせた家の構造、生活様式、季節行事や装飾品、楽器や娯楽もあるでしょう。武器や道具を使うならば、技術力や機械工作や鋳造技術に沿ったビジュアルも想定すべきです。

     人が意思疎通してより良い生活を求めると、市が立ち、街となり、国家となります。技術や政治形態が進歩して、文明レベルを押し上げます。国家のイデオロギーは、対立や戦争を産み、政治・経済・司法のありかたを変化させます。

     社会の遷移から騎士団の存在が明確になり、目的や背景がボンやりすることを防ぎます。

    ヨーロッパの町並みには、暴力の歴史が刻まれている

    ◎ 世界は自然の中にあり、物理法則が働く

     気を配るのは、人間の環境だけではありません。

     文明圏をとりまく自然環境があります。モンスターを含む動植物には食物連鎖があり、生息地(コロニー)や縄張りが存在します。地形は天候に影響し、大気の変化は四季のサイクルにつながります。季節は農業や狩り、人や荷物の移動、祭儀といった生活に直接影響します。

     自然が生み出す資源や地理的な影響。それは国家間の戦争や驚異に対する、地政学的なリスクと密接に関わります。

    ◎ 魔法は熱力学に従わない

     そしてファンタジー世界の醍醐味、熱力学の法則を捻じ曲げる魔法のルールは、取り扱い注意品目です。

     魔法という謎の言葉は便利ですが、魔法の成り立ちや、発動原理(ロジック)、効果、特性を決めないと、作中のリアリティを殺すことになるので注意が必要です。

    テーマやシナリオにあわせて、必要な項目をカテゴライズして情報を書く

    ■世界はどこまでも続く

    ◎ 深堀りは蟻地獄の砂

     テーマやシナリオプロットに沿って、「文明(ひとが創ったもの)、自然、魔法系のアンナチュラル」の大きなカテゴリーに分類。細分化して設定を組むと、「あっ、これ考えるの抜けてた!」ということが少なくなります。

     しかし、細かな設定を深堀りすると、関連項目が増え、情報量が肥大化します。
     情報の重複がなく、きれいに読める資料化はとても大切です。作る方は楽しいですが、読む方は興味がないのですから。

    ◎ 情報流通は見やすさにつながる

     なので、攻略本か設定資料集でも書くつもりで台割(※目次のようなもの)を切り、情報の優先度や情報流通の最適化しましょう。この配慮は、愛される資料作りにつながります。時間がない場合でも、開発に着手するために必要な情報から、優先的に構築しましょう。

     設定のないクリエイティブなんて、意味がありません。きちんと資料を作成しておくことは、必要なことです。

     もちろん叩き台レベルであれば、凝った設定は必要なく、「現代日本風」とか、「13世紀ヨーロッパのプロイセン風」、っと共有資料に短く書いておくだけでも問題ありません。ただし設定者は中身を十分に練っておかないと、ビジュアルの発注でトンチンカンな指示を出したり、誤りに気がつけません。

    ◎ 困ったら歴史から学べ

     世界を構築する資料を作るには、文化人類学を中心に、歴史、雑学が役立つことがあります。するすると思い描いたものが資料化できればいいのですが、困ったときは歴史や過去の文明、記録を参考に発想を広げるのがよいでしょう。

     歴史は人が歩んだ記録ですから、リアリティがあり、おかしな事になる率が少ないのです。

     特に西洋ファンタジーの分野では、剣と魔法要素がでてきます。地域別の文化に民族の生活様式、その中で行われる祭儀、伝えられる神話、宗教の歴史情報は発想の視野を広げてくれます。

    戦いの歴史は経済、宗教、政治、地政学と絡み合い、調査対象は果てしない

    ■「すべては芝居のため」

     世界観とは物語と共にあり、設定は物語を構築するための補強材(または柱や梁)の役割を果たしていると言えます。

     最後にあらためて。シナリオを補完する世界観設定がなぜ必要なのか?
     その本質は、書いた本のお芝居を成立させるためです。

     キャラクターに芝居をさせるためには、舞台や環境にあったビジュアルが必要となり、動作させるシステムが必要になります。そのすべては設定資料から生まれるのです。

     一言で相手に伝えられる強固な世界観をつくるためにも、妄想力を膨らませ、物語の表現を支える美しい世界構造を紡ぐ。それが設定者の役割です。

    ※※ 次回は「シナリオ執筆のコト始め・企画編」です

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