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SaaSチームにおける生成AI活用による工数削減の取り組み
 

SaaSチームにおける生成AI活用による工数削減の取り組み

デジタルマーケティング・オファリング学部 SaaS チームでは、自社製品開発の生成 AI ツールによる効率化をすすめています。今回はその取り組みの一例をご紹介します。
本記事では、実プロジェクトでの活用状況と、どの程度の工数削減につながったのか実例とあわせて共有したいと思います。

本題に入る前に、SaaS チームについて簡単に説明します。
アピリッツの SaaS チームは、デジタルマーケティング支援やデータ分析をする部署に所属するチームで、サイト内検索などの SaaS サービスを開発・運用しているチームです。お客様や運用代行をしている社内チームからのフィードバックを受け、日々多くの改善タスクを抱えています。自社サービスということもあり、対応要否についてスムーズに意思決定を行うことができますが、優先度の高いタスクへの対応に追われ、その他のタスクが後回しになる状況が続いていました。
そのため、半年ほど前から実装時の工数削減や負荷軽減を目的として生成 AI ツールの導入と開発効率化を試みています。

取り組みの方針と評価基準

今回は実装タスクで Devin を利用し開発効率化を目指しました。指標はシンプルに「見積もり工数に対する実際の工数」で測ることにしました。これまで機能開発を行ってきたサービスに対する見積もりなので、ある程度信頼できる見積もり精度となる想定です。また複数メンバー・複数タスクで実施することで、見積もり精度のバラつきがあったとしても、効率化の傾向の有無を判別できるようにします。いつも通りの作業を想定した見積もりで、1~2人日程度から10人日程度の改修や、ある程度の規模の新規機能開発を対象としました。

やってみての結果

結論から言えば、どのタスクも人手による作業を削減する効果がありました。見積もりの工数・期間に対し20%~50%ほどの効率化が見られるケースが多く見られました。以下にいくつかの事例をあげます。

事例1 (メンバーA): FAQ検索サービスの機能追加・改善

  • 小規模タスク (1~2人日)
    • 見積工数: 1~2日 (8~16h)
    • 実工数: 数十分
    • 所感: issue の詳細設計+セッション指示で完結。フロントは Devin のみで対応、バックエンドは一部 Devin に任せ人間が対応。
  • 中規模タスク (4~5人日)
    • 見積工数: 4~5日 (32~40h)
    • 実工数: 約16h (2日でマージ)
    • 所感: 実行環境や背景説明に時間を消費 → 事前情報準備で効率化余地あり。

半年間で89セッション実施、59PRをマージ。他の運用業務も抱えつつ、チーム内で最も Devin の恩恵を受けている。


事例2 (メンバーB): サイト内検索の機能追加

  • 見積工数: 7日 (56h)
  • 実工数: 41.5h(内15hが手作業)
  • 所感
    • issue の詳細設計+セッション指示で完結。
    • UI は 一部 Devin に任せ人間が対応。
    • Devin の実装をレビューする時間が多くかかった。

大きめのタスクでも効率化を確認。ただし修正・調整の負担は残る。タスク分割やコーディング規約整備でさらなる効率化が期待できる。


事例3 (メンバーC): クローラ作成

  • 見積工数: 15日 (120h)
  • 実工数: 10日(80h)
  • 所感
    • docs に設計・運用方針を文書化し、Devin に参照させた。
    • 以前は Cline を利用していたが、同じくドキュメントを参照させることでツールを移行しても対応できた。
    • ドキュメントを基にロードマップを作成 → ステップ単位で Devin に依頼。

文書化とロードマップ分割により効率的に推進可能。


全体所感

  • Devin の効果は 小~中規模タスクで顕著
  • 設計や文書化、タスク分割が効率化のカギ
  • UI や修正作業は依然として人間の負担が大きい。
  • メンバーごとの使い方に差はあるが、総じて開発効率を押し上げる結果となった。

まとめと今後の展望

今回の成果

今回の取り組みにより、大小さまざまな実装タスクで一定の効率化が得られたことが確認できました。特に、詳細設計や環境情報が整っているタスクでは、高い生産性を発揮しました。

効率化のポイント

  • 事前準備の重要性
    • 詳細設計や既存実装の情報、品質基準を整備して共有することで、AI ツールの理解を助け効率化につながる。
  • タスクの適切な分割
    • 1人日程度のサイズに落とし込むことで依頼しやすくなり、無駄なく活用できる。
  • 得手不得手の考慮
    • UI 実装や複雑仕様対応など、AI ツールが現状苦手な領域は人間がフォローする。

今後の展望

今後は、Claude Code や Codex などのツールも利用し、小中規模の機能追加や改善だけでなく、大規模機能開発や運用業務の効率化にも積極的に取り組んでいく予定です。

石井 歩(いしい あゆみ)
デジタルマーケティング・オファリング学部 SaaS グループ
プッシュ通知のサービスを中心に、アピリッツの SaaS サービスをみています。
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